PINK FLOYDピンク・フロイド『あなたがここにいてほしい』君はあちら側の人、それともこちら側の人? 君は教室の中ではいつも独りぼっち、何の目的もないまま、親の言うがままに受験勉強なんかもしてみる。そこそこやっていれば並のハイスクールに行けるだろうし、適当なジョークの一つも言っていれば、友人の一人や二人は出来るさ。なんとなくやっていけば何とか生きていけるさ。 教室ではむかつく教師がもっともらしいお説教、もういい加減ウンザリ。抵抗する気力もない。 あるいは、いじめられっ子にもなってみたりもする。それも、けして退屈しないからいいものさ。かまって貰うだけ幸せさ。 少し頑張って一流大学なんてのにも行ってみたりする。ああでも、卒業目の前にして就職できず、卒業してみれば、どこかのスーパーでパートのおばちゃんと一緒にアルバイト。何て高い学費だったことか。 就職すればしたで、安月給で競争させられ、クタクタで家へ帰ればただ寝るだけの生活。 もう君は爆発寸前。ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。 世の中なんとなく捲かれてやっていけば何とか生きていける。うん、とりたてて、疑問も持たずに楽しくやっていけるさ。こちら側の世界でね。 ミュージシャンにでもなってみようか。ギターを片手に、君に夢を抱かせるスターにでもなって…… 《ようこそマシーンへ》 ♪さあ坊や、このマシーンへようこそ 時間というパイプに押し込まれた事も 玩具をあてがわれて ボーイスカウトに入れられた事も そんなお母さんをやっつけたくて ギターを買った事も 学校が嫌いだったことも いまはすべてに不感症である事も さあ、このマシーンにいらっしゃい♪ それとも狂ってみるかい、薬でも打って。大人になっても幼児性を捨てきれず、徹底的に世の中を無視してみるかい。 《狂ったダイアモンド》 ♪きみが何処にいるかだれにも分からない ひょっとしたらすぐ近くかも知れないけど でもいいさ、君は狂ったダイヤモンド ぼくらを無視して輝くがいい 狂気のひだを重ねてゆけよ ぼくらは人気の上にあぐらをかいたまま 世間の寒風に乗って旅を続けよう きみは永遠の少年 勝者にして敗者 真実と妄想の探求者 すべてを超えて輝いてくれ♪ ………………………………………………………………………………………………………………………………………… 《PINK FLOYD 「WISH YOU WERE HERE」(あなたがここにいてほしい)の思い出》 このアルバムのジャケットは当初、紺色のビニールカバーが付けられていて、それを剥がすと炎に包まれた男と手を握っている男のポートレートが現れるようになっていました。右上隅には焼けこげた後がある。この紺色のビニールカバーは、剥がして売られていた店もあったようで、こだわりのピンク・フロイドファンには不評でした。私はこのビニールは燃やす物だと解釈していました。 この「WISH YOU WERE HERE」はこれまでのフロイドのアルバムとは違い優しさに包まれていた。テーマになったのは、シド・バレットであることは明らか。既に『狂気』でビッグなプログレバンドになっていたピンク・フロイド。廃人と化していたシド・バレットに対しての後ろめたさもあったのだろう。 ロックが巨大なビジネスのマーケットになりつつあった時代で、プログレッシヴ・ロックの存在意義が問われようとしていた。ピンク・フロイドはそのあたりの狭間に揺れていたような気がする。大作主義とコンセプト主義に。そして、バンドの頭脳ロジャー・ウォータースはさらに内省へと向かい、バンドを脱退する。 プログレッシヴ・ロックは1974年のキング・クリムゾンの『レッド』そして、この1975年の「WISH YOU WERE HERE」を境に急速にムーヴメントとしては鎮静化にむかっていきました。 ジャンル別一覧
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